日本における肥満の現状と新たな治療アプローチ:ウゴービの登場
日本では、体格指数(BMI)という指標を用いて肥満の程度を判定しています。BMIは体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割ったもので、25以上で肥満、35以上で高度肥満とされています。肥満率は世界的に比較的低いですが、増加傾向にあります。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、2009年にはBMI25以上の人々が全体の24.3%を占めていましたが、2019年には26.3%と増加しています。特に50代と60代の男性で肥満率の増加が顕著です。この動向を受けて、日本肥満学会は「肥満によるまたは関連する健康障害が予測され、医学的な減量が必要な状態」と定義される「肥満症」を設定し、治療の対象としています。
治療においては、食事療法と運動療法が基本とされています。食事療法は、体重を減少させて内臓脂肪を減少させることで、肥満に伴う健康リスクを軽減することを目指しています。肥満症の場合、1日の摂取エネルギー量は目標体重(キロ)に対して「25キロカロリー以下」、高度肥満症の場合は「20~25キロカロリー以下」に制限されます。必要に応じて、それ以下のエネルギー摂取量が設定されることもあります。
運動療法は、肥満の予防や体重維持に効果的ですが、体重減少に直接的な効果は限られています。推奨される運動の量と頻度は、軽~中強度の有酸素運動を1日30分以上、週に150分以上行うことです。
新たな肥満症治療薬「ウゴービ」(一般名セマグルチド)が、2023年3月に薬事承認されました。この薬は、GLP-1というホルモンと似た構造を持ち、インスリンの分泌を促進する作用や食欲抑制、腸の運動を抑える効果があります。ウゴービと同様の薬は、既に糖尿病の治療薬として国内で使用されています。これらの薬は、「メディカルダイエット」として、肥満症ではない人々にも自由診療で使用されていますが、注意が必要です。急性膵炎などの重篤な副作用が発生する可能性もあるため、正しい使い方が重要です。厚生労働省や消費者庁、国民生活センターは共同で注意喚起を行っており、「薬の適切な使用」を強調しています。
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