新たな希望が生まれたアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」:その効果と未来への展望

2023年9月25日、良いニュースがあります。厚生労働省がアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認しました。アルツハイマー病は進行性の脳疾患で、多くは65歳前後で初発症状が現れ、徐々に記憶力の低下、性格の変化、精神的な課題などが現れ、最終的には致命的な状態に至ります。


米国では現在、65歳以上の人口の約650万人がアルツハイマー病とされ、アルツハイマー病協会は2050年までにこの数字が1270万人に増加すると予測しています。日本でも2060年には800万人に達する見込みです。


現在の段階では、アルツハイマー病を完治させる薬は存在しません。アルツハイマー病患者とその家族は、病気の進行を遅らせ、自立した生活を送る時間を延ばす治療法を切望しています。


これまでの研究から、アルツハイマー病患者の脳には有害なタンパク質であるアミロイドβ(ベータ)が蓄積していることがわかっており、これがアルツハイマー病の原因の一因と考えられてきました。そのため、過去20年以上にわたる研究では、アミロイドβの除去に焦点が当てられ、米国のFDAが最近承認したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」と「レカネマブ」もこのアミロイドβをターゲットとしています。


これらの薬は、日本のエーザイと米バイオジェンが共同開発したモノクローナル抗体薬ですが、アデュカヌマブはアミロイドβの水に溶けない形態に結合し、一方、レカネマブは水に溶ける形態のアミロイドβである「プロトフィブリル」を標的としています。


アデュカヌマブは2021年に承認されましたが、アミロイドβの除去能力は確認されたものの、認知機能の低下を遅らせる効果はわずかであり、一部の専門家からは疑問視されています(日本では未承認)。また、一部の患者では脳の腫れや出血などの副作用が報告されています。


一方、厚生労働省が正式に承認したレカネマブは、認知機能の低下を遅らせる効果が初めて治験で示された薬として注目されています。レカネマブは早期アルツハイマー病患者の脳内のアミロイド斑を効果的に除去することが第3相治験で示されました。18カ月後の評価では、レカネマブを投与された患者はプラセボ(偽薬)を投与された患者に比べ、認知機能の低下が27%少なかったという結果が報告されました。この成果は2023年1月5日に医学誌「The New England Journal of Medicine」で発表されました。


ただし、この効果に対しては批判的な意見も存在し、薬の投与に伴うリスクと安全性についての懸念もあります。アミロイドβはアルツハイマー病の全体像の一部であり、病気の進行を遅らせるためには他の要因も考慮する必要があるとの立場もあります。




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