未来の研究を担う情報力―東京大学が研究インテリジェンス組織を新設へ
東京大学(東京都文京区)が、未来に向けた有望な研究テーマの発見や研究者の確保を目指して、情報の収集と分析を行う研究インテリジェンス組織を、今年度中に新たに設立する計画が明らかになりました。大学が情報の収集と分析に特化した組織を立ち上げることは非常に異例的であり、この取り組みによって研究分野における「情報戦」での優位性を高め、国際競争力を向上させ、世界トップクラスの研究拠点として国内外をリードすることを目指しています。
東大関係者によれば、この新しい組織は藤井輝夫総長の主導で、最初は約10人のメンバーでスタートし、その後数十人に拡充する予定です。内部の教員や専門家だけでなく、外部からの人材も迎え入れることを検討しており、来年の予算では約3000万円程度の人件費を見込んでいます。
新しい組織では、広範な公開情報に加えて、学術会議などの研究者の集まりに代表者を派遣するなどして、国内外の研究および研究者の動向に関する最新情報を継続的に収集する予定です。同時に、東大の研究者が取り組んでいる研究内容にも注目し、把握することを目指します。対象となるのは理学や工学に限らず、人文科学や社会科学を含むあらゆる分野です。
近年、世界レベルの研究力を維持するためには、各専門分野のエキスパートが集まり、新たな研究分野を切り拓いたり、新たな研究アイデアを見つけ出すことが不可欠です。東大は、国内の研究活動を活性化させるために政府が推進する「国際卓越研究大学」の認定を見据えつつ、研究分野のグローバルな動向を把握し、他の大学に先駆けて将来有望な研究者や学生を確保する取り組みを行います。
総長は、新しい組織の役割について「深い洞察を持つ組織ができれば理想的です。専門的な目利きがこの役割を果たしていくと考えています」と述べています。この分析の結果は、東大の学生教育や他大学との連携に加えて、東大の研究者が研究の方向性を検討する際にも役立てられる見通しです。
この新しい取り組みは、国家安全保障などの意思決定を支援するために情報を収集し分析する「インテリジェンス」の考え方に基づいています。情報収集、背景分析、将来予測などがその柱とされ、国家安全保障に関わる組織としては内閣情報調査室や米国のCIA(中央情報局)が有名です。
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